11月分野別研究会
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11月自然環境科学・研究講演会
~三田市(自然環境系)&淡路(景観園芸系)から~
日時 11月14日(金)14:00~19:00
場所 姫路商工会議所本館6階
第Ⅰ分科会(自然環境系)603号室 担当報告者:後藤企画委員
①「魚から見た水辺環境の保全」
自然環境マネジメント部 田中哲夫助教授
普通種が当たり前のように住んでいる河川環境を保全または再創造し、その環境を人が「良しとして享受できる」状況に戻すことが、人間環境目標。洪水を防ぐという観点だけでなく、トータル環境保全という点では、現在の建設設計は矛盾がある。生態系が住める環境こそ、環境保全的設計。「川の蛇行は、水の入替が土中でおこるため、究極の「浄化槽」である。ストレートな川はいらない」というご提案はインパクトがあった。
②「絶滅危惧植物を増やす」
自然環境再生研究部 永吉照人教授
日本に自生している野生植物の中で、維管束植物についてみると、約1/4近くが絶滅の危機にさらされている(全国版レッドデータブック)。特にラン科の植物を中心に、種子から開花、種の保存に関する研究を行なっておられる。また、ラン科の一種である姫路市花である「サギソウ」の話題も頂き、聴講者が身近に感じられる講演となった。
人類は、地球上に存在する動植物の「種」数(100万種)のわずか1%しか種を把握しておらず、それを人間の欲のためだけに破壊しているという、言葉には、身につまされる感じがした。
③「地球環境時代」
自然環境マネジメント部 宮崎ひろ志講師
ひとりひとりのライフスタイルが、地球環境まで左右するのだ、ということを、日常の生活での事象にとらえてお話しがあった。特に「断熱材」の有用性と「屋上屋を重ねる」熱効率に関する話題は、地球上のトータルエネルギーの観点だけでなく、電気ガス代節約という生活に密着した視点の話であり、節約・快適生活が 地球環境保全とイコールであるということが良く理解できた。難題な研究情報を、非常にフランクな話題として変換頂いた講演は、聴講者にとっても、自分たちが出来る環境保全をイメージしやすかったのでは?と思われる。
「総括」
今回は、三田市「人と自然の博物館」から、3名をお招きし、「自然環境」に関する講演を頂いた。経験的に、「産学交流」の一目的である、「新商品開発」にこだわるあまり狭いエリアの話題依頼や大学へのテーマ押しつけ感があると、なかなか本来の「交流感」がなくなり、前に進まなくなることがあるが、今回は、「はじめての自然環境系テーマ」とい
うことで、聴講者にも「新たな目」で大学研究を見つめるきっかけになったのでは?と思う。
新商品や新規テーマはたいてい異分野に「きっかけ」が存在するものであると思っているため、今回の司会・聴講の経験は、小生にとっても、自主開発テーマの方向性を見なおしてみる「きっかけ」になった。
講演の先生方には、種々、当方の依頼事項に対し、快く対応頂いたことに、大変感謝致します。
第Ⅱ分科会(景観園芸系) 601号室 担当報告者:石井企画委員
①「教育的効果を考慮した緑地空間デザイン」 山本聡助教授
21世紀のための教育を目的とした世界的な庭園プロジェクトとして、英国南東部のコーンウォール地方に造られた施設である。施設は、縦240m×横110m×高さ55mで世界最大級の2つの巨大温室と野外劇場、サッカー場が35個分のイベント用テントなどが有り、太平洋諸島、マレーシア、西アフリカ、熱帯南アフリカなどを模擬して展示を展開している。
施設は環境教育を主目的として植栽デザインが指向されており、人間の生活と密着した物質を例にして、施設を見学する経過で植物の重要性を訴え、自然環境に対して目を養い共存を図るという内容であった。
②「衛星から見た環境問題」 美濃伸之助助教授
衛星環境リモートセンシング技術による地上表面の観測を目的としたものであり、地表の広域観測、長期的観測を実施することにより自然環境破壊、例えば、森林減少・土壌侵食・砂漠化・土地荒廃など地球表面や大気圏での急激な変化を我々の生活にフィードバックしてくれる。実際の画像を通してサウジアラビア近郊の砂漠化、大阪近郊の緑地帯の減少など、講演が進むと共に自然破壊問題と、緑地帯、河川、湖などの大切さを考えさせられる内容であった。
③「最先端アートと地域振興」 竹田直樹助教授
『美術は、近代社会において宗教から、現代社会においてはイデオロギーから解放され、自律性を手に入れた。』と云う講演から始まり、美術を大きく分ければ、
1.サブカルチャー系 :アニメ、まんが
2.コミュニケーション系:茶道に近い
3.インスタレーション系:映像、パフォーマンス
に分けられ、サブカルチャー系は企業がCMなどで利用し、コミュニケーション系、インスタレーション系は企業が支援するようである。講演は主にコミュニケーション系について説明され、茶人の利休はコミュニケーション系に該当するようである。例として、アサヒビールが支援の「野点」の木村としろうじんじんさん、頭部にフランスパンを何本も紐で括りつけたパン人間の折元立身さんのパフォーマンス。これらを見たとき、ただ通り過ぎるのではなく、「何しているの」という問い掛けが最先端アートを知る上で大切であり、理解する近道のようです。無難しい・・・と言う感想です。
以上が3名の先生方の講演内容ですが、従来の工学系とは違い、自然環境系のテーマであるため、参加企業会員の業種を考えた場合に融合性の問題を感じましたが、先生方の解り易い説明と、私たちの生活にマッチした内容であった為、参加会員の活発な質問も多く、無事に講習会が終了しました。私個人としての想いも自然環境系の講演は私たちの生活視野を養ううえにも有意義な研究講演会だったと感じています。